インタビュー 必殺の仕事人たち

第12回 殺陣:宇仁貫三

『必殺』のみどころと言えば、やはりクライマックスの「殺し」のシーンである。小五郎が悪人を仕留める華麗な刀さばきこそ、まさに『必殺』の真骨頂。それを影で支えているのが、殺陣師・宇仁貫三だ。『鬼平犯科帳』、『剣客商売』などのドラマで殺陣を担当、時代劇の王道を歩み、数々の立ち回りを生み出してきた宇仁が、『必殺仕事人2009』では、一撃の美学に挑んでいる。宇仁が語る殺陣の真髄とは?

『必殺』を手がけて

宇仁貫三

僕は殺陣担当ということなんですけども、小五郎が刀で斬ったり、主水が小刀を突き刺すときの動き以外にも、涼次が相手の家に忍び込むときの動きなども、担当しています。僕は、黒澤・三船で育ってきましたので、豪快で迫力があって、かつリアリティを追求した殺陣を手がけてきたんです。『必殺』は今まで自分が育ってきた環境と別世界だったので、ぜひやりたいと思っていました。

『必殺』はずばり、夢の世界だったですね。「あれ? ここまで時代劇を崩すこともできるし、面白くケレンで見せられるんだな」と思いました。『必殺』というのは、今まで僕がやってきたことのない世界でしたね。だって、涼次のように、刺す前に針をクルッと回したりなんて、他の時代劇ではありえないでしょう?

それに、視聴者で見ていたときから、照明の面白さ・明暗のコントラストは印象に残っています。スッと影から明るいところに出てくる場面とか、セリフ言ってるときでも口元しか光が当たってないとかね。そういうライティングは面白いなと思ってました。

アドリブが生み出す迫力

宇仁貫三

僕が昔から心がけていることは、テスト撮影はごく少なくするということです。『必殺仕事人2007』で、小五郎が15人斬ったシーンがありましたね。あのときは、まず最初に僕が素早く段取りをつけて、一度ゆっくりやって見せました。それから、東山さんに一回だけテストしてもらったら、もう本番。それ以上テストを重ねると、段取りになってきちゃうんですよ。役者の方が、「70%くらい頭に入ったな」というくらいのときに本番をぶつけると、とっさの動きが出て、それが迫力につながってくる。そのアドリブの面白さですよね。

そのためには、受ける側が上手くなきゃいけない。動きの変化に合わせて、主役を立てられるかかり方が大切です。あのときは15人をワンカットでいってますから、もし手が違うからって待っちゃったら、そこでもうカットなわけです。斬り込みに間を置かず、迫力のある、激しいかかり方をする。斬るか斬られるかの世界ですから、型だけじゃだめなんです。

石原監督とは他の作品で何度もご一緒してますし、性格も全部把握してるつもりです。現場で作っていくのが石原監督のやり方ですから、それに合わせて変えてもいいところと、監督が何を言おうがやってしまうぞというところとを分けています。監督も僕も、あるていどのキャリアを積み重ねて来ているから、臨機応変に対応できるんだと思います。

小五郎と涼次の今後

宇仁貫三

東山さんの動きっていうのは、たった一撃であっても、すごく流麗なんですよ。それでなおかつ迫力がある。表情を変えずにバサッと斬って、何事もなかったようにスッと納刀するのが、小五郎のすばらしいところじゃないかな。他の時代劇なら斬ったときは「斬った」という顔になるんです。ところが、この『必殺』では、そういう顔をしなくても、何にも不自然じゃないんですよね。そのスマートさ、静と動のリズム感が、僕はすごく印象に残っています。

このシリーズが始まった頃は、東山さん演じる小五郎の斬り方も、相手の刀を受け取ったすきにズバッと斬ってしまうとか、卑怯な手をアレンジしながらやっていました。でも、最近になって、そういう中途半端なやり方ではなく、強烈な斬り方に変えてきているところです。

今まで小五郎は一撃必殺ということでやってきたんですけど、第12話では、斬った上に、もうひとつ突こうじゃないか、と提案しました。奉行所のお奉行が一番の悪人だったら、 自分が同心であるだけに許せないんじゃないだろうかと思ったんです。今後は脚本の段階で、悪人をもっと悪く、もっと強く作ってもらって、最後にとどめをさすことに、もっと強い意味を込めたい。悪人の殺しがより激しく残酷になることで、仕事人がそれを仕留めていく意味が強調されるんじゃないか。「みんなの恨みつらみを背負ってオレが斬ってやる」という激しさをもっと出したいんですよ。

松岡さん演じる涼次も、もっと動かしたいなと思っています。松岡さんとは、僕も何作も仕事してきてますが、彼の動きはすごく迫力あって俊敏なんですよ。たとえば、庭からバッと跳んできて、悪人が気がついたときには目の前にいて、相手が動く間もなく針でブスッと刺すとかね。そういう動きをぜひ、盛り込んでいきたいですね。(了)